鹿児島の食とデザイン

鹿児島県の重要産業である「食」に関して、デザイン及びデザイナーの力で付加価値を高め、食産業の活性化する事業をおこなっております。

鹿児島の食とデザイン-インタビュー

インタビュー

10.13

経営者file.1. 下園薩男商店 常務 下園 正博 氏

会社の経営としてデザインが必要になってきた

下園薩男商店 常務 下園 正博 氏

webインタビュー
今回は、鹿児島でデザイン開発に取り組んだ食品関連企業経営者へのインタビューです。第1弾は、鹿児島県阿久根市にある昭和14年創業の水産加工会社、株式会社下園薩男商店 常務 下園正博さんにお話を伺いました。2013年に発売した「旅する丸干し」シリーズでは、農林水産大臣賞、天皇杯など多数受賞。下園氏に、この商品の立ち上げから、現在に至るまでのデザイナーとの関わりをはじめ、経営とデザインとの関わりや想いなどについてお話を伺いました。

「デザインが伝えてくれる商品の良さ」

-『旅する丸干し』は数々の賞を受賞されていらっしゃいますが、その中でデザインが果たした役割とは?

今のデザインじゃなかったら、きっとここまで評価されていないと思います。100%あのデザインのおかげと言ってもいいと思います。きっと、このデザインじゃなかったら今の展開になってないでしょうし。デザインが果たした役割は全体の何パーセントかと言うと難しいですが今のデザインじゃなかったら、気づいてくれる人がだいぶ少なかったと思いますし、そのまま普通の商品の中に埋もれてしまっていたと思います。それはデザインのおかげですね。

-デザイン変更初期の頃、バイヤーさんとの話の中でデザインの話題になりましたか?

デザインだけではないのですが、全体を見て『なんなの?コレ?』と言うような話になりました。そして、展示会などへ出展するとバイヤーさんが気に留めて、立ち止まって見てくれるんです。『なんなの?コレ?』と、ちょっとした違和感というか、引きつける力ですかね。単に悪目立ちするだけじゃない、なにか惹かれるものをきちんとデザインが伝えてくれていたのです。

デザイナーの冨永功太郎さんと共に講演

~【鹿児島の食とデザイン2016】のデザインセミナーにて、デザイナーの冨永功太郎さんと共に講演。ブランドとしての“旅する丸干し”と題し、企業とデザイナー双方の立場からお話をしていただきました~

「デザインで変わっていく、広がっていく」

-デザインの初案を見て、どう思いましたか?

最初、デザイン見たとき自分自身は好きじゃなかったのです。でもデザインしてくれたデザイナーの冨永さんが『あれがいい』というのと、実際デザインしたラベルを瓶に貼って社内の女性従業員に見せたら、結構評判が良くて。『だったらコレいけるかもしれないな。』という気持ちになりました。その後、商品から始まってギフトボックスや、実際展示会要のブースなど冨永さんと一緒にやってもらっているので、クオリティがコントロールできているように思います。

-従業員のみなさんに変化などありましたか?

弊社は干物を多く取り扱っているのですが、自社商品を買う従業員はいませんでした。
でも、「旅する丸干し」が出来てからは『買って行っていいですか?』と言う従業員も増え、お歳暮などの時期は親戚に贈るとか、孫にあげたら『こんなの作ってるの?』と喜ばれた!と、喜んでいる従業員もいます。従業員のモチベーションが変わりました。そして、今では商品を知って入社してくる従業員もかなり出てきたので、またこれからも変わっていく感じがします。

「デザインは付加価値の1つの要素」

-なぜデザインが必要だと思ったのですか?

もともと普通の干物屋だったのですが、これから先このままでは駄目だなと感じ、付加価値をつけ、生産量が少なくても成り立つような商売を中小企業としてやっていかないといけない。付加価値をつけるのであればデザインが絶対必要で。でも当時は、そのデザインはどういうふうにしたら出来上がるのかわからなかったし、デザイナーさんも全然知らなかったんです。会社の経営としてデザインが必要になったのだと思いますね。

-『旅する丸干し』の次は、何をされるご予定ですか?

三部構成で、『旅する丸干し』『旅する焼きエビ』あともう1つは『旅する○○○○』を作りたいと思っています。そして、来年2017年の5月に直営店を出すので、それに向けて自社商品をどんどん増やそうとしています。食品だけではなく他の物もできてくるかもしれません。でも「今ある事に ひと手間加えて それを誇り楽しみ 人生を豊かにする」という企業理念からぶれないようにしていきます。

鹿児島の食とデザイン2016の展示会

~鹿児島の食とデザイン2016の展示会【食とデザインのひみつ】にて、デザインが生まれるまでと題し‟旅する丸干し‟にフォーカスしたコーナー。どんなプロセスでデザインができていくのか、来場者が興味深くブースをご覧になっていました~

-『デザインしたら売れるの?』と聞かれたら何と答えますか?

『デザインしなきゃ売れない。』ですね。デザインしたから絶対売れるわけでもないし、デザインだけじゃ売れない。だけど、デザインが無いと売れないと思います。デザインは、何かを表現するための一つの手法でしかないので、味や価格帯などと同じ要素の一つですね。

下園 正博

下園 正博 氏プロフィール写真

Profile:鹿児島県阿久根市の水産加工会社、株式会社下園薩男商店の三代目。昭和14年の創業以来、うるめいわし丸干しやサバ味醂干しなど塩干品を製造。現代の食生活の変化を実感し、新コンセプトの商品開発を開始。2013年に発売した「旅する丸干し」シリーズでは農林水産大臣賞、天皇杯など受賞多数。